樹々は空には届かないけど、宙には届く。
割れてばらばらになりそうな月を、護るため、
割れた月月をひとつにするため、
あなたは宙に手を伸ばす。
その手があなたを闇で覆うことになっても。
あなたを覆う闇は、あなたの身と時間を凍り付かせる。
そのあなたを覆う闇は、割れてばらばらになった月を温める。
あなたは自分の身を冷たくし、自分の身をばらばらにしながら、月を温め、月をひとつにする。
あなたの身を、時間を月に与えるかのように。
あなたを包む恐怖に耐えながら、あなたは立つ
月がひとつになるにつれ、ゆっくり闇は消える。
凍り付いたあなたの身と時間がゆっくり溶けてひとつになる。
闇はもう、あなたを守る必要は無い。
闇はもう、恐怖では無い。
闇ですら、愛だった。
あなたは立つ。何の恐怖も無く。
あなたとともに、大地が立つ。
あなたはそこにいる。
あなたを守ってくれていた闇は、夜へと姿を変える。
夜になれば星星が姿を顕す。
闇はもうあなたを守らない。
闇はあなたを見守る。
闇はあなたでなく、星星を震わせる。
星が月を揺らす
月が大地を照らす
あなたが芽吹く
星が在ったところに花は咲く
花は星の痕跡
大地は宙に向かって芽吹く
宙いっぱいにあなたが咲く
あなたはずっとここにいた